わたしと「昔ながら」。

MY SHIOKARA
STORY Vol.10

「三⼗夜塩⾟ 波座は、
まろやかで余韻が違います」

宮城県気仙沼市
⻫藤道有さん・由実さん

波座には「昔ながらの濃厚熟成塩⾟」の製法を活かして、最⾼のイカ塩⾟を⽬指した「樽熟成三⼗夜塩⾟ 波座」という商品があります。この塩⾟は、「ほぼ⽇刊イトイ新聞」や「ほぼ⽇⼿帳」で知られる「ほぼ⽇」さんとのご縁がきっかけで⽣まれました。今回は、この商品の誕⽣の背景を知る⻫藤夫妻にお話を伺いました。

「昔ながら」の熟成塩⾟は、
他のと全然違った。

道有さん:塩⾟って居酒屋さんでも出てくるじゃないですか。⼿作りしてたりして。
でも「昔ながらの濃厚熟成塩⾟」を初めて⾷べた時に「全然違う!」と思いました。
熟成させた塩⾟って⾷べたことがなかったんですよね。すっごく美味しかったです。

由実さん:私もこんな塩⾟は初めでした。
塩⾟は⼦どもの頃からよく⾷べてました。⽗親が塩⾟が⼤好きだったので、⽗もたまに作るんですよ。それはまあ普通の味だったんですけど(笑)。
だから、「昔ながら」の美味しさには驚きました。
「昔ながら」は職場があるビルの1階ににお⼟産屋さんが⼊ってるので、いつもそこで買わせていただいてます。

「三⼗夜塩⾟ 波座」は、
覚悟と誇りを込めて開発。

由実さん:「樽熟成三⼗夜塩⾟ 波座(なぐら)」のほうは、気仙沼でも⼯場にある⾃動販売機じゃないと買えないんですよね。知り合いがどうしても買いたくて、⾃販機まで買いに⾏ってました(笑)

波座・朝⽥:⾃販機とサイトでしか売ってないんです。すみません。
「三⼗夜塩⾟ 波座」は震災後に⼯場を再建させた時に、最上級ブランドとして開発した商品です。再建の覚悟と、企業としての誇りを込めて、社名である「波座」を商品名に掲げました。
「昔ながら」と同じ製法で、国産イカのみを使⽤して、しかも⽪を剥いたやわらかな胴⾝だけを使った塩⾟です。まろやかで、深い味わいを⽬指しました。
国産のイカは希少になりましたし、⽪を剥く⼿間もかかります。しかも胴⾝だけを使うので、⾝全体の3分の1ほどしか使えません。だから値段も張ってしまうんですよね。

由実さん:やっぱり⾼級品。すごく特別な塩⾟なんですね。

「ほぼ⽇」の⽀援が
誕⽣のきっかけに。

由実さん:私は気仙沼にあった「気仙沼のほぼ⽇」(2011年11⽉〜2019年11⽉)の社員として働いていたので覚えているのですが、「三⼗夜塩⾟ 波座」って震災直後、「ほぼ⽇」の「デザインで気仙沼のお⼿伝いを何かできないか?」という話がきっかけで⽣まれたんでしたよね。
「ほぼ⽇」としては当時、気仙沼の企業の⽅と⼀流のクリエイターの⽅が繋がって、気仙沼から良い商品をどんどん出せるようになってほしいという想いがあったんです。
その⼀環で「ほぼ⽇」の社員がクリエイターの⽅に声をかけて、⼀緒にボランティアのプロジェクトを⽴ち上げました。その1つが波座物産さんでした。
この「三⼗夜塩⾟ 波座」のアートディレクターも髙⽥正治さんなんですよね。
私たちは、髙⽥さんがロゴをデザインされた、⽷井(重⾥)さんのゲーム「MOTHER」の⼤ファンなんです。だから今⽇は髙⽥さんにもお会いできるので、2⼈とも「MOTHER」のTシャツを着てきました(笑)。波座さんが今も変わらず、クリエイターの⽅とお仕事をされているのは、ほぼ⽇のみんなもうれしいと思います。

朝⽥:「ほぼ⽇」さんには、本当にお世話になりました。
元々は「昔ながら」のパッケージをリニューアルする話だったのが「最⾼の塩⾟をつくろう」という話で盛り上がり、波座の考える最上級の塩⾟として「三⼗夜塩⾟ 波座」を開発することになりました。

「ほぼ⽇」のサイトでも
期間限定で販売。

由実さん:「ほぼ⽇」がやっていた販売企画「うまけりゃうれるべ市。」でも「三⼗夜塩⾟ 波座」は何度も扱わせていただきました。
「ほぼ⽇」の社⻑の⽷井さんはおいしいものが⼤好きな⽅で、「うまけりゃうれるべ市。」で売るものは、全部ご⾃⾝でジャッジするんですよ。

道有さん:僕らもいろんなものを⾒つくろって、たくさん東京に送ったよね。

由実さん:気仙沼のいろんなメーカーの商品をたくさん送ってるので、⽷井さんは実はいっぱい試⾷されてるんですよ。だから結構ボツになったものも多くて。
「ほぼ⽇」も関係して⽣まれた商品というご縁はあるんですけど、⽷井さんは「三⼗夜塩⾟ 波座」をすごく気に⼊っていたので「うまけりゃうれるべ市。」では何度も出品をお願いさせていただきました。

朝⽥さん:うれしかったです。それに、よく売れました。本当に感謝しかないです。
「ほぼ⽇」さんには、うちの塩⾟職⼈・⼤原富夫さん(元⼯場⻑・現相談役)を取材していただいて、「東北の仕事論。気仙沼 波座物産篇」という記事にもしていただきました。あれも懐かしいですね。うちの塩⾟がいかに⼿作りと、肝(ワタ)にこだわっているかを⼤原さんと私が⼒説しています(笑)

気仙沼らしいデザインは、
お⼟産にも最適。

由実さん:最初私は「波座」って読めなくて。「なぐら」って読むの!?みたいな感じでしたけど、かっこいい名前だなと思ってました。その名前がこのロゴデザインになって、パッケージに⼊ったのを⾒た時はすごく印象的でした。
波のマークもかっこよくて、気仙沼っぽくて良いし、30⽇以上樽で寝かせているから「三⼗夜」という名前も洒落てますよね。

道有さん:「昔ながら」もそうですが、波座さんの塩⾟は、お⼟産には鉄板ですね。

由実さん:そうそう。お⼟産に持っていくことが多いです。「ほぼ⽇」の⼈たちも気仙沼に来るとお⼟産に買って帰ることが多いです。

「三⼗夜塩⾟ 波座」は、
豊かな風味と余韻がすばらしい。

由実さん:「昔ながら」を⾷べた時は「本物の塩⾟の味って、これなんだ!」と思いました。⽢味とか余計なものが⼀切⼊ってない製法はストイックで、職⼈気質を感じます。
「三⼗夜塩⾟ 波座」のほうは、イカの⽪を剥いてあるせいか⾝がしっとりしてて、まろやか。品のいい美味しさですよね。
⾷べると、発酵のふわ〜っとしたまろやかな風味が⼝に残って、余韻がすばらしいと思います。ごはんとすごく合うし、旨味がたっぷりなので、アンチョビみたいに料理にちょっと⾜しても深みが出て美味しいです。

最後まで味わいたくて、
お茶漬けにするのが好き。

由実さん:私は塩⾟をごはんにのせて⾷べるのが好きなんですけど、最後に残ったタレがもったいないじゃないですか。
すごくセコいんですけど(笑)、タレにお湯を⾜して、ごはんにかけてお茶漬けにするのも好きです。鯛茶漬け的に。

道有さん:お刺し⾝とかが残ったらお湯をかけてお茶漬けにしたりするもんね。いいよね。

由実さん:タレが実⼒を発揮してきます(笑)。⼿間ひまかけて作られているのが分かるので、タレまで全部味わえるお茶漬けを⾷べていると、職⼈さんに感謝したくなります。

取材を終えて。
波座・朝田慶太

「ほぼ⽇」さんとのご縁は本当に⼤きかったです。

「ほぼ⽇」さんが震災の年に、気仙沼に⽀社を作ってくれたことで気仙沼の⼈たちはとても励まされ、影響を受けたと感じています。もちろん私もその⼀⼈です。
「気仙沼のほぼ⽇」のスタッフとしてがんばっていたのが由実さん。道有さんも「東北ツリーハウス観光協会」の代表をはじめ、様々な活動を⾏っていて、いつも驚かされます。気仙沼を盛り上げるために奮闘されているお⼆⼈には頭が下がります。これからも、どうぞよろしくお願いします。

取材を終えて。

⻫藤道有さん

実家は気仙沼にある明治30年創業の⽼舗「マルト⿑藤茶舗」。震災直前にアート活動の準備のため地元に戻っていた際に被災。以後、気仙沼を拠点に美術家としての活動のほか、東北ツリーハウス観光協会の代表を務めるなど活躍の幅を広げている。

⻫藤由実さん

2012年に気仙沼に移住し「ほぼ⽇」の気仙沼⽀社「気仙沼のほぼ⽇」のスタッフとして⼊社。2019年11⽉まで勤務。現在は「サユミ」の名でイラストレーター、ライターとして活躍している。