わたしと「昔ながら」。

MY SHIOKARA
STORY Vol.3
「まぐろ屋なのに、塩⾟だけ買っていくお客様もいます」

「まぐろ屋なのに、塩⾟だけ買っていくお客様もいます」

岩⼿県⼀関市
鮮魚まぐろ屋 阿部裕⼀郎・みち⼦さん

「昔ながらの濃厚熟成塩辛」を気に入って、お店でたくさん売ってくださっている鮮魚店があります。
どこを気に入ってくださったのか?お客様の反応はどんな感じなのか?お話を伺ってきました。

阿部ご夫妻

「昔ながら」は肝の美味しさ。
それが、昔の塩⾟の味。

裕⼀郎さん:私たちは気仙沼出⾝なので、塩⾟はけっこう⾷べますね。昔はイカも安かったので、家でも作ってました。
気仙沼には塩⾟のメーカーがいろいろあるので、前はそれを買って⾷べてたんですけど、この塩⾟(昔ながらの濃厚熟成塩⾟)ができてからはこればかりです。「昔ながら」は、昔⾷べてた味なんですよね。

みち⼦さん:だって気仙沼の⼈がうちの店で買っていきますから。「気仙沼であまり売ってないんだよね」って(笑)

裕⼀郎さん:「昔ながら」は、味がずっと同じなんですよね。
ほかの塩⾟も美味しくはなってるんだけど、なんか味付けをしてる感じがするんですよね。
でも「昔ながら」は、たぶん腑(イカ肝)とイカの⾝、塩ぐらいでしょ⼊ってるの。俺に⾔わせると、それが昔の味なんですよ。
親も家で塩⾟作ってたけど、やっぱりね、こういう美味しい味は出ないんですよ。少し⽣臭かったんですよ、うちで作るのは。
これは違う。やっぱり本職の味だよね。⽔っぽくないし、腑(イカの肝)の味がちゃんとする。だから今は、これが⼀番。誰に出しても、みんな美味しいって⾔うよね。これ⾷べると他の⾷べられない(笑)

みち⼦さん:他のは⾷べられないです(笑)

気仙沼での仲買業から、
⼀関のマグロ専⾨店に転業。

裕⼀郎さん:「鮮⿂まぐろ屋」は、気仙沼で揚がったマグロを売る専⾨店として、24年前に、こちらの岩⼿県⼀関市で開業しました。
元々は気仙沼で家業として⿂の仲買をやっていて、最初の頃は仲買とこの店と両⽅をやっていました。⽗が引退した時に、この店⼀本にしぼりました。
今も⾃宅は気仙沼にあって、毎朝、市場で⿂を仕⼊れた後、1時間かけてこの店まで通っています。

みち⼦さん:うちの⼈は仲買をやってた頃から⼩売をやりたかったんですよ。でも私は、当時は店をやるのが反対でした。「仲買だけでも⼤変なのに、なんでそんなことまでやらなきゃならないの!?」って。

⾃分が⾒極めたマグロを
お客様に直接売れるよろこび。

裕⼀郎さん:仲買の時は、東京や秋⽥などに⿂を卸してました。
マグロを⼊札で安く買って、⾼く売れれば利益があります。でも、送った先の市場のせりで値が上がらなかったら利益が少なくなる。送るためには運賃もかかる。ましてや運んでる途中で傷んだりすれば売り値が30%、40%引かれるんです。もう⼤⾚字。⽉にならしたら「今⽉の利益3,000円」なんてことすらある(笑)
でも、⼩売なら⾃分で思った値段で売れるんですよ。⾃分が良いマグロを選んで安く買ってきて、値段は損が出ないように付けられる。お客さんとも直接やり取りできます。やりがいが違いますよね。

市場の風景

「昔ながら」は開けると
箸が⽌まらなくなる。

裕⼀郎さん:俺は酒はあまり飲まないから、「昔ながら」はごはんに乗せて⾷べてます。塩⾟だけで⾷べますね。
開けたら3⽇かな、4⽇は持たないです。箸を⼊れると⽌まらなくなるでしょ。

「塩⾟のじゃがバター」、
「塩⾟焼きそば」もオススメ。

みち⼦さん:うちの娘は、この塩⾟をじゃがいもと合わせてますね。
じゃがいもを茹でてホクホクにして、その上に乗っけてバターも付けて⾷べるとすごく美味しいって。
うちのお客さんの飲⾷店だと、「昔ながら」ではなくて、「生造り塩辛」でしたっけ、あれを使って「塩⾟焼きそば」をメニューとして出してますね。それもすごく美味しいですよ。みんなに⾷べさせてあげたいぐらい。

塩⾟を買ったお客様が、
次はまとめ買いをしてくれる。

みち⼦さん:波座の社⻑の朝⽥慶太さんと私はいとこ同⼠なので、「昔ながら」はよく⾷べるし、ついつい⼒も⼊ってしまうというのもありますが、お客様に勧めると、わりと買ってくれますね。
タレントのDAIGOさんがテレビで勧めてたのを知ってる⼈もいるし。
私のトークで買って⾏ったとしても、次にその⽅が店に来る時は、「あれ美味しいね!」って⾔って、今度は3個とか買って⾏ったり。「みんなにあげるから」って。
結局美味しいと、みんなにあげたくなるじゃないですか。だから、まとめて買ってくれる⼈がけっこういますね。
ただうちの店にはストックがあまりないので、最近よく売れるので切らすんですよね。「あれ?無いの?なんだ、あの塩⾟買いに来たのに」なんて⾔われて。まぐろ屋に塩⾟だけ買いに来る⼈、けっこういますよ(笑)
娘には最近1箱送りました。すぐ無くなるって⾔うので(笑)。「やっぱり美味しい」って返事が来ました。

⼯場の⾃動販売機へ
わざわざ買いに⾏く⼈も。

みち⼦さん:そう⾔えば先⽇、⼯場にある⾃動販売機で青唐辛子入りの「昔ながら」を買ってきてもらいました。美味しくて、すぐにリピート。また買いに⾏ってもらいました(笑)
うちのインスタにも、あの⾃動販売機の写真を載せていたら、お客様がそれを⾒て⾃動販売機に買いに⾏ったそうで、2⼈も⾃分のインスタにその写真を載せてました。
うちで買って「美味しい!」ってなって、わざわざ買いに⾏ってくれた⼈たちです。

塩⾟だけ買ってくれても、
私たちはうれしい。

みち⼦さん:「昔ながら」は、本当に美味しいからお客様に勧めやすいんですよね。

裕⼀郎さん:うちらが勧めて買っていった⼈で「美味くなかった」と⾔った⼈はいません。「あれ、美味しかったよ」っていつも⾔ってくれる。

みち⼦:私たちは、この塩⾟だけ買っていってくれてもいいんですよ。それだけでうれしい。
「塩⾟だけでもいいですか?」って⾔われても、「もちろんいいですよ〜」みたいな(笑)

取材を終えて。
波座・朝田慶太

お客様の反応、作ってる本⼈たちに聞かせてあげたいです。

お忙しい中、お⼆⼈の話を聞かせていただきありがとうございました。
みち⼦さんと私とはいとこ同⼠でもあり、お⼆⼈が「昔ながら」に⼒を⼊れて売ってくださっているおかげで、いろんな⽅に⼿にとっていただけてうれしく思います。応援ありがとうございます。
買ってくださったお客様が再び買いに来て「美味しかったよ」と⾔って、また買っていってくださるなんて、本当にありがたい限りです。
この話は、⼯場のみんなに聞かせてあげたいです。作っている本⼈たちは、そういう話はなかなか聞けませんから。

取材を終えて。

鮮⿂まぐろ屋

気仙沼の⿂市場で新鮮なマグロや⿂介類を毎朝仕⼊れて、岩⼿県⼀関の店舗へ直送。ご夫婦が店舗でさばいて販売している。
仲買⼈として鍛えてきたご主⼈の確かな⽬利きで仕⼊れた質の良いマグロを求めて、飲⾷店の⽅を中⼼にお客様が訪れている。