わたしと「昔ながら」。

MY SHIOKARA
STORY Vol.1
「わたしは、ごはんに塩辛のタレ染み込ませて」

「わたしは、ごはんに
塩辛のタレ染み込ませて」

宮城県気仙沼市
武山米店 武山陽子さん

新米の季節。塩辛を美味しく食べられるごはんについて知りたくて、気仙沼にある老舗のお米屋さん「武山米店」の武山陽子さんにお話を伺ってきました。

宮城県気仙沼市 武山米店 武山陽子さん

気仙沼では、
塩辛は家で作るもの。

気仙沼では、塩辛は「作る」っていうイメージですよね。昔、じいちゃんがよく作ってて、すごく美味しくて。
その作り方を伝授された母が、ご近所からいかをもらうたびに作るので、気づけば食卓に並んでいて「あ、今日も塩辛なんだね」っていう感じでした(笑)。塩辛を作る文化があるんだなぁって、小さい頃から感じて育ちました。

気仙沼では、塩辛は家で作るもの。

「昔ながらの濃厚熟成塩辛」は、
じいちゃんの味。

「昔ながら」を初めて食べた時、初めての感じはしなかったですね。私は小さな頃から塩辛が食べられたので、懐かしさがありました。
なんか、うちのじいちゃんの味に近くて。手作り感もあるし、味も色もじいちゃんの塩辛な感じ。あ、すみません!職人の方が作っているのに!
意識してなかったけど商品名に「昔ながら」って付いてますものね(笑)。
じいちゃんは、生きてたら100歳の人。母の父なので、米屋のじいちゃんではないんですけど、母の実家に行くといつも塩辛を作ってた印象が残っています。あの美味しさに似てるんですよね。

「昔ながら」は、じいちゃんの味。

創業は明治10年。
3度の再建を乗り越えて。

武山米店は明治10(1877)年の創業です。初代はこの場所で始めたわけではなかったんですけど、ここに移って来てから大正4(1915)年と昭和4(1929)年の2度の大火で消失して2度再建。
東日本大震災もあったので3度大変だったというか。今回の再建が3度目になります。
この辺は江戸時代に帆船が沖へ出る風を待ったことから「風待ち地区」と呼ばれています。
震災後、この「風待ち(かざまち)地区」にあった、うちや蔵元の酒店「男山(おとこやま)」さんなど6つの国登録無形文化財の古い建物を修復して残そうという声が上がって、たくさんの方の支援をいただき、土地がかさ上げされた後に復元されました。

創業は明治10年。3度の再建を乗り越えて。

にぎわいを取り戻したくて。

再建するに当たっては、道路を拡幅するために同じ場所には建物を建てられなくて。店舗の奥に蔵があったんですが、石造りだからバラせないので、木造部分だけ解体して、位置をずらして建て直されました。そのため、今話しているこの場所にスペースができたので土間にして、なんでもできるイベントスペースにしました。
再建した頃はこの辺りには何も無くて、にぎわいを取り戻したくて決めました。蔵もかまどや昔の炊飯器などを展示する「炊飯美術館」として改装し、2階の和室も無料で公開しています。

炊飯美術館
2階の和室も無料で公開

「お米屋だから、おこわやろっか」とおこわも売るようになり、火・水・木の限定ですが販売しています。おかげさまで、だいたいお昼には売り切れてしまいます。
見学の方もお越しになるので、土曜日はここで「かもしか堂」というカフェも地元の方にやっていただいています。

おこわの限定販売

美味しいものは美しい。

気仙沼では塩辛はいろいろ作られていて、どれも美味しいんですけど、特に色は他では見たことがない感じですよね。
そう言えば、ここでカフェをやっている遠藤さんが言ってたんですけど、「昔ながら」を焼きそばに使うと言っていて。

(遠藤さんが会話に参加)
遠藤さん:塩辛をいろいろ試して、塩辛焼きそばを作ったんですよ。「昔ながら」が一番美味しかった。贅沢なんですけど(笑)
わたしも、塩辛の色が違うなあと思って。色が美しい。すごく好きだなと思ってました。全部手で仕込んでるからかなあって想像したりして。美味しいものは美しいんですよ。

あ。それは、私が言ったことに(笑)

新米には、
濃厚な塩辛が合う。

新米は、水分が14.5パーセントから15パーセントで出荷すると言われています。今は保管技術が向上したので、昔みたいに新米だから水加減を調整するみたいなことは要らなくなったんですけど、新米のツヤと香りの良さは、保管技術が上がっても追いつけず、新米の良さはツヤと香りと言われています。見た目でわかります。
そんなツヤが良い新米で炊いたごはんには、「昔ながら」のような濃厚な塩辛はものすごく合うと思います。

新米には、濃厚な塩辛が合う。

塩辛の食べ方で
お米の銘柄を選ぶのがコツ。

「昔ながら」に合うお米の銘柄は、その人の食べ方の好みによると思います。
ごはんに塩辛のタレを付けたくなくて「ごはんはごはん、塩辛は塩辛で食べたい」と言う人もいます。
逆に、ごはんと塩辛をからめて食べるのが好きな人もいます。わたしは結構、混ぜたいタイプなんですけどね。
だから、わたしの場合は「ひとめぼれ」とか「つや姫」とか、タレが染み込みやすい感じのもっちりしたごはんと食べたいかな。
ごはんと塩辛を分けたい人は「ササニシキ」みたいなサッパリしたお米が良いと思います。塩辛とごはんをより美味しく食べたい時は、銘柄も自分の食べ方に合わせて選ぶのがおすすめです。ぜひ、やってみてください。

塩辛の食べ方でお米の銘柄を選ぶのがコツ。

青唐辛子入りのは、
ちびちびと。

青唐辛子入りの「昔ながら」は先日初めていただいたんですけど、とっても美味しくて。わたしは、これこそごはんに合うなと思いました。
お酒のつまみにはもちろん合うんでしょうけど、わたしは、これはごはんに乗せないで別々だなあ。「昔ながら」はごはんと軽く混ぜて食べたいんですけど、青唐辛子入りは、ピリッを感じながら、ちびちびと。ごはん、塩辛ちびちび、ごはん、がいいな。

青唐辛子入りのは、ちびちびと。
七味唐辛子は、全部これに。

七味唐辛子は、
全部これに。

「昔ながら」に合わせて調合されたと聞いている「波座の七味唐辛子」は今、あらゆるものに使ってます。
美味しくて、辛味が強くないので、いっぱいかけちゃってますね(笑)。
もちろん塩辛にもかけますが、七味を使う時はどんな料理もこれになっちゃってます。色味も、とってもきれいですよね。

おにぎりに塩辛も美味しい。

おにぎりに塩辛も美味しい。

陽子さんのお母さん:そう言えば先日、お昼のまかないがおにぎりだったことがあったんですよ。庭に生えてるシソを海苔の代わりに巻いて。
食べきれなかったので、夜そのおにぎりに塩辛を乗せて食べましたよ。

そうそう。塩辛をおにぎりに乗せて食べるのも、うちではよくやりますね。
美味しいです。

おにぎりに塩辛

取材を終えて。
波座・朝田慶太

「⾊まで美しい」と⾔われて、
うれしかったです。

武山さん、今日はいろいろ聞かせていただき、ありがとうございました!
ごはんと塩辛の相性の話、とてもおもしろかったです。
自分の塩辛の食べ方に合った銘柄が分かりました!
わたしは、ごはんに塩辛のタレを染み込ませたくないので、箸にとった塩辛をぽんぽんと軽く弾ませてほおばります。
塩辛とごはん、それぞれの味を楽しみたいわたしには、ササニシキが合っていそうです。ぜひ試してみます!
「昔ながら」の色が美しいと言われたのは初めてです。
「美味しいものは美しい」。良い言葉ですね。
波座の塩辛は一切着色していないので、いかの肝の色がそのまま出るんですよ。美しいと言っていただいて、とてもうれしかったです。

取材を終えて。

武山米店・炊飯博物館

明治10(1877)年創業の老舗米店。明治33(1900)年に現在地へ移転。昭和5(1930)年に建築された現在の建物は、平成23(2011)年の東日本大震災の津波で約3m浸水するも、大半が残り、多くの方の支援により復原された。国登録有形文化財・気仙沼市指定有形文化財に指定されている。
店舗の隣にはイベントスペースを併設。蔵は「炊飯美術館」として改装し、古い電気炊飯器やかまどなどを展示、無料公開している。建物2階の見事な和室も土曜限定で一般公開。土曜は「かもしか堂」というカフェもオープン。地元の人や観光客が憩うスポットとして知られる。

武山米店・炊飯博物館